「スマイルプリキュア」は、第1話のオープニングを見た時に、まず、作り手の「覚悟」を感じた作品でした。
「GOGO」以来、プリキュアシリーズは、新プリキュア登場、というのを、シリーズ中盤での盛り上がりにしていました。この手段は、中だるみしそうな中盤を大いに盛り上げるための極めて有効な手段です。
ところが、このOPは、「この五人だけで一年間やっていく」という事が伝わる歌になっていました。
また、EDを見た時も、かなりの衝撃を受けました。第1話の時、ある程度予感はありましたが、第2話において、「5パターンのED」である事が明かされました。
これを見た時は、「五人がそれぞれ主役」という作品のコンセプトが伝わってきました。
実際、序盤から、この五人の描き込みようには驚かされました。各キャラの初変身を描いた5話まではもちろんですが、決め台詞を決めた第6話、秘密基地を決めた第7話あたりまで、キャラの基本設定を掘り下げていました。
さらにそこからは、五人の為人および、お互いの間で築かれた友情を、従来以上にじっくりと、かつ濃密に描いていました。
企画が出来てから、相当深く作りこんだのでしょう。その勢いのまま、序盤から印象に残る話を連発しました。5月半ばくらいまでは、シリーズ最高傑作になるのでは、とまで思っていたほどでした。
その後も、一旦勢いが衰えたものの、夏になってまた面白い話が続きました。
ところが、秋に入り、一気に失速していった、という感じになってしまいました。
その原因の一つに、みゆきのキャラというものがあったのでは、と思います。
序盤においては、転校生として皆に馴染もうとしていくこと、かつ最初のプリキュアとして仲間を集めたり、チームの基本を作るところなどで、その個性が存分に発揮されていました。
ところが、そのあたりの流れが落ち着いた結果、「絵本好き」以外に目立った特徴がなくなってしまいました。
その時点で新たな属性を追加するような形で、キャラのテコ入れをしていれば、何ら問題はなかったと思います。
実際、漫画版では、「アカンベーの猛攻を受けている時でも、近くにいた虫が無事だったのを喜ぶ」とか「みゆきが風邪で離脱。当初は四人で普通に闘えたが、だんだんと不在の影響が出てくる」などのオリジナル話で、みゆきのキャラを立たせていました。
ところが、アニメではそれができませんでした。その代わりに「他の四人の能力・存在感を落とすこと」によって相対的に位置を高める、という形でのテコ入れが行われてしまいました。
その結果、怠け玉話・映画・シンデレラ話などで、みゆきは目立つ事ができました。ただ、その代償は大きく、秋以降の話に色々と無理が生じてしまったように思えます。
その件も含め、大きかったのが、製作元の東映アニメーションの体制だったと思っています。
監督の大塚さんはツイッターで、仕事の状況や上司の言動などを流していました。そこで見る東映アニメーションは「ブラック企業」そのものでした。
また、原画を一人だけでやった、などという話もありました。アニメの製作過程に関する知識はありませんが、普段、10人くらいでやっている原画を一人でやる、というのが相当無理をさせている、という事くらいは解ります。
他にも、東映のやっている公式サイトの更新が雑で、あかねの母・なおの両親などのキャラ紹介は最後まで掲載されませんでした。
このように、どう考えても無理な人数でこの作品を作っている事が、随所に伝わってきました。
みゆきのキャラに弱さが生じてしまった際に、適切なテコ入れができなかったのも、そのあたりに原因があるのでは、と推測しています。
というわけで、秋以降はかなりの失望感もありました。しかしながら、8月くらいまでは、本当に素晴らしい話が多く、心に残るシリーズとなりました。
まず、衝撃を受けたのは第6話でした。ひと通りの世界設定を五人が理解したあと、いきなり、みゆきが言ったのが「決めポーズを作る」でした。
それに対する、あかね・なおと、やよいの反応の対称性、さらには、れいかの予想外の対応に、まずこの五人の位置づけの面白さを感じたものでした。
さらに、続く第7話の「秘密基地決定」における、れいかの想像を絶する言動にも衝撃を受けました。この時点で、キャラクター並びに、その位置関係の作りこみが、相当深く練られている、と思ったものでした。
また、ここでせっかく決まった「秘密基地」が、その後たいして活用されなかった、というのも、印象に残りました。なにしろ、この五人は、一緒に色々な所に遊びに行くのが好きでした。それゆえ、「秘密基地」にいる時間が減ったわけです。
その後も、この五人の描写は、印象に残るものが多々ありました。
嘘で自分たちに恥をかかせたにも関わらず、その、やよいをかばった四人優しさの描写も印象に残りました。
また、みゆきの母の日プレゼントを奪われた時に、あかねが言った「それ、返してんか・・・返せと言っとるんや!」という怒りの描写には、彼女の強い「想い」を感じたものでした。
あと、修学旅行の夜で見せた、五人の「普通の女子中学生ぶり」および、、はしゃぎ終わったあと、寝るときに、不運だった、みゆきをそれぞれ気遣う、という場面にも、心に残るものでした。
そして、運動会の話では、足の遅い、やよいを四人が優しくフォローします。さらに、最後転んで最下位になったにも関わらず、なおの所に駆け寄って、その頑張りに四人は感動します。これらの話は、今でも強く心に焼き付いています。
また、夏休みに描かれた、五人が色々な所に遊びにいくシリーズも、印象に残っています。本当にこの五人は、お互いが一緒にいる時間を大切にしているな、と思いました。
それらの素晴らしい話が生まれた土台にあったのは、キャラ作りの深さだと思います。先述したように、中盤以降の、みゆきは少々残念でしたが、それを除けば、敵味方とも、本当に描きこまれていました。
普段は、一番幼そうな、やよいが、時たま見せる鋭さ。逆に、一番しっかりしている、れいかが、たまにズレたところを見せます。その結果、やよいが、れいかに容赦ないツッコミを入れる、などという描写が、違和感なく楽しむことができました。
他にも、そのキャラの作りこみには何度も感心させられました。
今回は、プリキュアでも異例の、主役五人と妖精を除いた一般人キャラにレギュラーらしいレギュラーがいない、というシリーズになりました。そのように五人とその関係を描くことに絞った事は、かなりの成功だったのでは、と思っています。
また、「プリンセスモード」が出てくるまでの戦闘シーンも、毎回楽しめました。
最初の頃は、闘いかたもぎこちなく、必殺技一発で動けなくなるほどの体力しかありませんでした。それが五人とも、それぞれ自分なりに進歩していきます。特に、れいかの技の進化ぶりは、その視覚的な美しさとあわせ、本当に感心させられました。
一方、チームプレーもだんだんと上達していきました。その過程を見るのがまた楽しめました。さらに、日常パートと戦闘部分の関連付けがうまい話も多々あり、本当に隅から隅まで楽しめました。
秋以降(特に1月)はかなり残念な話も多々ありましたが、それを上回る優れた話がたくさんあったシリーズでした。
私生活において色々とあった一年ですが、この作品にはかなり元気づけさせてもらいました。そういう意味でも、この「スマイルプリキュア」に出会えた事には本当に感謝しています。