一つの「始まり」と一つの「終わり」が含まれており、ともに印象に残っています。「始まり」のほうは、なぎさとほのかが初めて二人で出かけた事です。これまでの話だと、第2話で科学部になぎさが顔を出したり、第3話でほのか邸に行ったりしてはいましたが、基本的には「お互いの人柄うんぬん」ではなく、「メップルとミップルを会わせるため」であり、そのついでにプリキュアとしての相談をする、という感じでした。
今回も、元々は「メポミポを会わせる」でしたが、それがきっかけで、二人して街に行くことに。ナンパ野郎の対処の仕方・好きな食べ物・行きたい所と、二人の考え・好みはことごとく合いません。ほのかは楽しい雰囲気作りをしようと、いろいろ気遣いをし、直接「美墨さんといると楽しい」とも言います。しかし、別れた直後の微妙な表情が本音を物語っています。この描写がまたいいです。一方、なぎさは率直にメップルに対し、ほのかと合わない旨を話します。
とはいえ、「違いが分かる」というだけでも人間関係としては進展があった、と感じさせる話でした。私はこの二人を「百合」的な視点で見る事はないのですが、この場面に関しては、「初デート」みたいな微笑ましさを感じました。
「終わり」のほうはピーサードの退場です。さんざんジャアクキングに叱咤され、仲間からもバカにされまくりのピーサードは、表題通り、捨て身でプリキュアに挑みます。ちなみに、仲間達の会話では、リーダーらしくピーサードに気を遣ったような建前の物言いながら、「奴はじきやられる」という本音が露骨に出ているイルクーポと、それを聞いて悔しさに打ち震えるピーサードの描写が興味深いです。
そして、ピーサードは変身前のほのかを襲撃し、衝撃で転んだほのかの手から離れたミップルを奪います。ところが、ここからのピーサードの行動は、合理性を欠くものでした。この時点で、ミップルがプリズムストーンを持っているかどうか分からない、というのはあります。とはいえ、このままミップルを持っていれば、そのままジャアクキングに献上するもよし、変身できない二人をいたぶってメップルを奪うもよしと、この時点でピーサードは圧倒的な優位を得ています。
ところが、その優位をピーサードはあっさり放棄し、ミップルをほのかに返し、「全力で来い」と言って二人を変身させます。これがまだ第2話くらいなら分からなくもないですが、ここまで4戦4敗というのが現実です。ジャアクキングに最終通告をされており、自らの命が危ない以上、本来なら、どんな手を使っても勝たねばなりません。
ただ、何となく彼の気持ちは分かります。彼に与えられた使命は「石を奪う事」です。しかし、本来の力を出せない状態で、転がり込んだような形での「成功」には満足できなかったのでしょう。銀河英雄伝説のラインハルトが「国を盗むのではない、奪うのだ」と言った心理に通じるものです。そのため、大きな危険を背負う事を承知で、あえて彼女たちに最高の力を出す環境を提供したのでしょう。人間の一少女である「ほのか」相手ではなく、「伝説の戦士・プリキュア」に勝ってこそ自分の使命が果たされる、という考え方なのでしょう。
一方、ほのかは、そのピーサードに論戦を挑みます。「力があるものが全てを支配するというのはおかしい」という彼女の考えは私個人としては極めて真っ当だと思います。しかしながら、ピーサードにとっては意味がありません。彼は力で全てを支配する世界に属しています。ほのかの言を認めることは自己否定になり、そうなると、後のキリヤのようにするよりありません。ちなみに、現在の「国際社会」は政治・経済ともピーサードの唱える世界です。
皮肉にも、この論争の結末は「マーブルスクリューで吹っ飛ばす」という「力あるものが勝つ」という終わり方をしました。ピーサードは闘いには敗れましたが、論争には勝ったわけです。
この2年間、計12人の「闇の使者」が登場しました。しかし、今振り返ってもピーサードにしかない個性の強さは際立っています。人間に化けた時の服装にもこだわりがあり、作戦との関係もないのに、わざわざサングラスまで調達したほどでした。また、「虹の園のエネルギーを献上」など、与えられた使命を果たすだけではなく、その上を目指すという「プロ意識」もありました。結果的に、それゆえに寿命を縮めてしまったわけですが・・・。
彼が去った時、どこかの掲示板で、会社員のファンから「おまえ(ピーサード)と一杯やりたかった。美味い酒が飲めただろうな」という追悼文がありました。同じ勤め人として、その気持ちは十二分に理解できました。