「ハートキャッチ」35・36話と映画

 「ハートキャッチプリキュア」は他シリーズと大幅に違う絵柄と、主人公をはじめ、様々な登場人物の「心」を描いた事が特徴となっているシリーズだと思っています。
 また、メインのプリキュアである、花咲つぼみ・来海えりかの持つ劣等感と、成長することによってそれを克服する過程を描いた、というのも印象に残っています。
 シリーズを通して心に残る話が多々あるのですが、今回は、文化祭を描いた35・36話と、その直後に上映された映画を「おさらいセレクション」します。

 第35話は、文化祭の準備で一話を使っています。
 ファッション部の部長である来海えりかが、超多忙の状況に頭を抱えながら、花咲つぼみ・明堂院いつきといったプリキュア仲間、さらには部員である志久ななみ達と協力して、準備を進めていきます。
 同時に、他の部活やクラス展示の準備なども描かれていきます。
 そこに出てくるキャラは、いずれも過去に心の悩みを敵組織であるデザトリアンに利用された人たちです。
 そのかつての心の悩みを乗り越えて、活き活きと文化祭に向けて頑張る皆を描く、というのも凄いと思いました。

 ところで、この35話の直前に、月影ゆりがキュアムーンライトに再び変身する、という逸話がありました。
 そして、圧倒的な強さで、かつて倒されたダークプリキュアに雪辱し、返す刀で三幹部も一蹴します。
 そのキュアムーンライト復活の流れを利用し、この話の戦闘描写は面白い事になっています。
 花咲つぼみ・来海えりか・明堂院いつきは、まわりの人が離れないため、変身できません。その結果、月影ゆり一人で、敵を倒す展開になりました。
 言い換えれば、この話で三人は、プリキュア変身を休んで、学園祭準備に専念したわけです。
 これも、プリキュアの歴史の中で、かなり珍しい事でした。

 続く文化祭当日の36話は、OPとEDを担当している歌手の方が自らをモデルにしたキャラの声を当てています。
 その二人が軽音楽部のボーカルなのですが、当日になって自信を失い、舞台に立つことを拒否する、という話の流れになります。
 あと、他の部活も、35話同様、過去の悩みを克服した人たちが、活き活きと描かれています。
 その中で、「プリキュアの同人誌をコスプレした部員が売る」というプリキュア史上空前絶後の描写もありました。
 また、今回の文化祭において、来海えりかが創設し、部長を務めているファッション部がステージのトリになりました。
 第1話でそのファッション部は部員が来海えりか一人だけになってしまう、という描写がありました。
 そのどん底から、花咲つぼみとの出会いもあって成長していった来海えりかが、クラスメートさらには明堂院いつきまで巻き込んでファッション部を大きくしていき、ついに、文化祭の大トリを務めるまでになったわけです。

 その後、戦闘となるのですが、それもこの話のメインである、文化祭大トリに活かして話が作られます。
 戦闘によって、公演時間が削られたため、軽音楽部のライブは中止になりかけます。
 それを見た、来海えりかは、2つの部が一緒にステージに立つ、という案を出します。
 そして、OP・ED担当のお二方がデュエットする挿入歌をバックに、ファッション部のステージが始まります。
 そこでの皆の立ち振る舞いの描き方に、ここまでの積み重ねが色々と描かれています。
 その描写が本当に絶妙で、何度見返しても感心させられます。
 プリキュア史トップクラスの名作です。

 この話が放映されたちょっと後に映画が上映されました。
 歴代の映画は、プリキュアが異世界で闘うのですが、この映画はフランスのパリが舞台となっています。
 そのパリで、プリキュア四人と来海家の両親・姉がファッションショーを行う、という設定でした。
 映画だとキャラ描写はあまりなく、ほとんどが戦闘となります。
 しかし、この映画は、逆に戦闘を必要最小限に抑え、日常描写がメインとなっています。
 シリーズの主題である、「成長」についても、お互いが自分の変化を語る場面などもありました。

 そして、もう一つの特徴として、敵側の描き方があります。
 この映画での敵であるサラマンダー男爵は、敵組織・沙漠の使徒の異端児で、王であるデューンに追放された、という設定です。
 同時に、過去にキュアアンジュというプリキュアに負かされており、双方に敵意を持っています。
 一方で、偶然出会い、封印を解いたてくれた、孤児のオリヴィエに対しては、不思議な対応をします。
 一見、オリヴィエを自分の手駒にしようとしているのですが、細やかな愛情を注いで見守っています。
 短い描写ですが、サラマンダーがオリヴィエを気遣う回想は強く心に残りました。
 そのため、オリヴィエもサラマンダーの事を、本人に聞こえない所で「父さん」と呼んで慕っています。
 そのオリヴィエと花咲つぼみが出会い、そこからまた、様々な話が描かれます。その後、サラマンダーの力により、オリヴィエが変身してプリキュアと闘います。
 そこで、来海えりかがオリヴィエを攻撃すると、それを花咲つぼみが身を呈してかばいます。その衝撃で正気に戻ったオリヴィエに対し、「怪我はありませんか?」と尋ねる場面も、プリキュア史に残る名場面だと思っています。

 その題名・主題である、「人の心」を深く描いた、素晴らしいシリーズが、この「ハートキャッチプリキュア」です。