22話の「プリキュアじゃない! 私は日向咲、あなたの友達だよ」と言う場面は、何度見返しても、心に響きます。
13話ラストで、桐生満・薫が初登場してから、この話での闘い、そして二人が矛を収めるまで描かれた一連の話は、本当に素晴らしく、この作品に出会えた事に感謝しています。
このシリーズの特徴として、敵側からプリキュア側に潜入するのが二人、という事が挙げられます。
「敵が味方になる」という設定は、プリキュアシリーズでは珍しくないのですが、このパターンは唯一です。
「ふたりはプリキュア」だったからできた設定と言えるのかもしれません。
そして、比較的社交的な満と、人と話す事が苦手な薫、という対照的な二人が、それぞれ異なるきっかけで、プリキュアたちと心を通わせていく、という描き方も秀逸でした。
13話ラストで登場した満と薫が、続く14話で、大空の樹の下で、咲・舞に会いに行きます。
続いて、夕凪中学校に転入し、その卓越した能力で、一躍、注目の的になります。
そこで、まず二人に声をかけてきたのが、ソフトボール部で咲と一緒に活動している、仁美だった、というのも面白いところです。
しかも、彼女は自分がソフト部なのに、二人のバレーボールでの絶妙なコンビプレイを見て、バレー部入部を勧めます。
一方で、アクダイカーン以外の指図は、敵はもちろん、味方でも受けない、という立場に固執する二人は、その申し出を強く拒絶し、仁美は傷つきます。
その仁美と、満・薫の関係修復に、咲と舞が動く、という所から、四人の交流が始まった、というのが非常に巧いと思いました。
続く15話では、一緒に学校生活を経験した結果として、「部活の妨害をするのが、プリキュアの力を削ぐもの」という仮説を立てます。
それを、この時点でプリキュア退治を命じられていたドロドロンを使って実行します。
結果的に、妨害作戦が途中で失敗したため、仮説の検証はできないのですが、二人は、この説に固執し、18話では、自らが動いて、同様の作戦を行います。
そして16話では、一転して、満・薫の出番が減ります。
「将来の夢」が主題なのですが、話は、健太がこの回の「主役」です、お笑い芸人を目指す彼をはじめ、舞の兄である和也が宇宙飛行士になるという将来の夢に向けてどのように考え、行動しているかが描かれます。
興味深い事に、主役である、咲と舞の「将来の夢」については語られません。だからといって、二人の存在感が薄れているわけではありません。このように、クラスメートや家族を中心に描き、かつプリキュア二人もしっかり描かれている、というのもこの「Splash☆Star」の特徴だと思っています。
その後、満と薫がいるところでその話題になるのですが、満が特にないという返答をしたのに対し、薫は、「アクダイカーン様の…」と言いかけます。
最初にも書きましたが、この満と薫の個性の違い、というのも、このシリーズの話を深めている要因の一つだと思っています。
続く17話のメインキャラは、舞の母である可南子です。
考古学者である彼女が、初めて発掘した埴輪をチョッピが壊す、というところから話が始まります。
その埴輪の修復に向け、咲と舞が頑張る話なのですが、途中、満と薫にその話をします。
すると、満は、「土で作ったものなら何でも修復できる知り合いがいる」と、ドロドロンなら治せる、という話をします。
別にそれを利用して信頼度を高めて後で裏切ろうとか、その埴輪を使ってプリキュアを倒そうとするわけではありません。純然たる好意によるものです。
14話で初めて出会ってから、少しずつ変化が生じている、というのを、このさりげない会話で描いている、というのにも感心させられました。
そして次の18話で話は大きく動きます。
咲の両親が経営しているパン屋でセールをやるのですが、人手不足により、たまたま来た満と薫に手伝いの依頼が来ます。
他人の指図を受けない事を信条としている二人ですが、それを理解している咲が、言葉巧みかつ、半ば強引に手伝ってもらう作戦を立て、それに流される二人、という展開も楽しめました。
そして、普通に人付き合いができる満が店の手伝いをしたのに対し、それが苦手で無愛想な薫には、咲の妹である、みのりの相手を頼みます。
彼女は、序盤から色々と重要な役回りをしていたキャラなのですが、この満と薫シリーズにおいて、キーパーソンとも言える存在になりました。
みのりは、自分も姉たちと一緒に店を手伝いたい、という希望を持っています。しかしながら、まだ小学低学年なので、接客も、パン作りも手伝う事はできません。
ただ、両親や姉の咲も、手伝いを頼めない理由が言えず、それゆえに、みのりは不機嫌になります。
ところが、話し相手に任命された薫は、その事を何一つ遠慮せずに指摘します。率直に言われて、みのりは泣きそうになりますが、続いて「ならば、あなたに出来ることを考えなさい」と助言します。
さらに、自分と満の話を始めます。率直な薫らしく、ダークフォールでの任務について、二人でどう分担しているか、などについても語ります。
それを聞いた、みのりは、「小さい自分でもできること」を考え、その結果として、なかなかパンが選べない高齢者の購入を手伝います。
それを見た、母親の沙織や咲も感心して、みのりを褒めます。すると、みのりは薫のところに駆け寄り、「薫おねーさん、ありがとう!」と言いました。
ここまで描いてきた薫の人柄をうまく使って、彼女にしかできない助言を、みのりに行い、その結果、みのりに慕われる、という話の作り方には感心させられます。
そして、この後のドロドロンとの闘いにおいて、満と薫ははじめて、プリキュアをこっそり助ける、という行動を取りました。
続く19話では、久々にプリキュアを妨害します。これまでの分析から、二人の心を乱せば力が出せない、という結論に達し、自らの能力で、咲のグローブと舞のスケッチブックを隠します。
作戦通り、大切なものが無くなってしまった二人が動揺し、二人の関係もぎくしゃくします。しかし、その間の二人の想いは、ともに「友達の大切なものが戻ってきてほしい」であり、心は一つになっていました。
その結果、満と薫の読みは外れ、二人は普段以上の力でドロドロンに圧勝します。
一方で、この「大事なもの」についての考え方が描かれた話になりました。
咲の父である大介の口癖に「すべての物に命は宿る」というものがあります。だから、どんな物でも大切に使うべき、という考えなわけです。
これは、「どうせいつかは死ぬのだから、今からすべての物を滅ぼせばいい」というダークフォールの考え方と対照的です。
その対照的な世界観と、意外な形で満と薫の作戦が失敗したのが興味深い話でした。
20話では、ここまでプリキュアと最前線で闘っていたドロドロンがついに退場します。
そのドロドロンとの最後の闘いの場所となったのは、梅雨時の紫陽花群落でした。
舞が、雨の日のとっておきのスケッチできる場所、という事で案内したところです。
途中で、満・薫と合流し、行動をともにするのですが、ドロドロンの襲撃に気づいた薫は、みのりを安全な場所に避難させます。それを見た、満も驚くほどの意外な行動でした。
ドロドロンが倒れたため、21話はついに、満と薫が前線に立ちます。
ここで立てた作戦は極めて合理的な、「プリキュアになる前の咲と舞を倒す」というものでした。
しかし、学校でまず実行しようとするものの、他の生徒を意識して未遂に終わります。
そこで今度は、舞の家で開催される天体観測会に参加し、そこで成し遂げようとします。
ちょうど、二人だけで台所作業をしているという、絶好の場面が訪れますが、二人の殺気を無意識のうちに感じた舞の母・可南子が食器を落としたために、ここでも完遂できません。
この、母親ならではの危機察知、という描写も強く印象に残っています。
また、その気になれば、衆目のなかで結果を出すこともできるのに、あえてそれをしなかったのは、二人の心の中にある葛藤を描いているのだな、と思ったものでした。
というわけで、当初の作戦を諦め、ウザイナーを召喚しての闘いに移行します。
当然ながら自らは姿を表さず、ウザイナーに闘わせます。
しかしながら、決着後に離脱しようと空を飛んでいるところを、舞に見られ、正体がバレてしまいました。
この時点で、舞はこの話を咲にしませんでした。自分でも「信じたくない」と思っていたというのもあるのでしょう。
これがまた、話を興味深くする要素になっています。
その翌日を描いた22話では、朝から、舞は考え込んでいます。
一方で、何も気づいていない咲は、いつものように、満や薫に親しく話しかけていました。
それに対する、二人の気まずい表情の描き方も印象に残っています。
それでも、まだ疑惑であって確証は持てていない舞が、校内を歩いていると、学校に遊びにきた、みのりがいました。
すると、ソフトボール部のファイルボールがぶつかりそうになります。すると、そばにいた薫は、ダークフォールの力を使って、ボールを消滅させ、みのりを守ります。
それを見たため、舞の「疑惑」は「確信」に変わりました。
この、敵対する闘いで正体に気づき、みのりを守った事により、それが確定する、という描き方は、本当に凄いと思っています。
しかし、まだ舞は、その事を誰にも話せません。
その日の放課後、咲は、舞・満・薫を大空の樹に誘います。
偶然なのか、薄々何かを感じてのことなのかわかりません。
そして、四人で大空の樹に行き、咲の勧めで、樹に抱くような体制になります。そして、満と薫は、それぞれ、ダークフォールのこと、咲・舞・みのりとのことを思い出します。そのうち、表情がだんだんと穏やかになっていきました。
そして、樹から離れた後、薫は初めて「咲」と呼びました。それを聞いてた咲は「やっと本当の友達になれた」と喜びます。
しかし、その直後、二人は自分たちに定められた運命を思い出し、ダークフォールの服装に戻って二人に闘いを挑みます。
何が起きたか分からない咲の隣で、舞は「やっぱり…」とつらそうな表情をしていました。
闘いが始まりますが、咲と舞は攻撃はしません。防御しつつ、二人を何とか説得しようとしています。
それに対し、満は、自分たちと、人間との価値観が根本から違う、と宣言します。
人間は、生きることを喜ぶが、自分たちダークフォールの使徒はあらゆるものを滅ぼすべき、という価値観であると言いました。
それを聞いた舞は即座に「じゃあ、なんで、みのりちゃんを助けたのよ!?」と反問します。
そして、「あなた達は本当は心の優しい人なのよ」と言いますが、それを否定できない二人は、「黙れ、プリキュア!」と言い返します。
それに対し、咲は「プリキュアじゃない!」と言い返します。
続けて、「わたしは、日向咲、プリキュアである前に、あなたたちの友達だよ。満、数学を教えてくれるって言ったじゃん、薫も、みのりとまた遊んでくれるって言ったじゃん」と語りかけます。
それを聞いて、二人の目の色と表情が変わりますが、最後の意地を振り絞る、という感じで再度闘いを挑みます。
そのまま23話に進みますが、最後は、満と薫の出した技を受けた咲と舞が、18話で二人を助けた謎の技と同じだった事に気づき、その時のお礼を言います。
それでも闘い続けようとする二人ですが、最後はついに薫が満の腕をつかんで攻撃をやめさせ、ついに決着しました。
その後、ゴーヤーンによって四人がダークフォールに連れ去られ、アクダイカーンから咲と舞を守るために、満と薫は生死不明になります。
その後、復活して、ついに四人の共闘が実現するという展開になりました。
ただ、立場を変えた二人ですが、アクダイカーンが滅びる時まで、「アクダイカーン様」と呼び続けました。
自分たちの考え方は変わったけれど、アクダイカーンに生み出された恩は忘れない、という筋の通った描き方に感心させられました。
延々と話の筋を追ってきましたが、改めて振り返ると、咲・舞・満・薫・みのりの五人の感情や位置関係が本当に上手く描かれたシリーズだったと思います。
「ふたりはプリキュア」に対し、「ふたりのダークフォール戦士」を登場させ、それぞれ違う形で、人間と接し、変わっていった、という描写が本当に素晴らしいと思っています。
早いもので、あれから14年も経ちましたが、この新鮮さはいまでも色あせません。