なかよし2019年7月号「スタートゥインクルプリキュア」

 AI時代の今、努力することに意味があるのか? という深い問題を主題にしていました。
 それについて、この作品の設定を最大限に活かし、一つの回答を提起していました。
 上北さんらしい、奥の深い話でした。

 観星中に転入してきた羽衣ララが色々と頑張るところから始まります。
 一方、学園のツートップは天宮えれなと香久矢まどかなのですが、その二人に対し、羽衣ララが「えれなとまどかは、わたしの目標ルン」と言っていました。
 自然な一言ではありますが、これまで、羽衣ララが地球に来てから色々と悩んだり悪戦苦闘した経緯があるだけに、ここまで皆と仲良くなり、かつ親しみと憧れが伝わる発言が聞けたのは、かなり嬉しいことでした。

 その一言がきっかけで、人間の能力を最大限に極めた「エボリュリュ星」を見学に行きます。
 しかし、その星はテクノロジーが進化しすぎて、一切努力しなくても、最高の頭脳・身体能力を得られるようになっていました。
 それに衝撃を受けた天宮えれなと香久矢まどか、さらには羽衣ララも、自分たちの努力に意味があるのか、と落ち込んでしまいます。

 その様子を見た、星奈ひかるは、三人を遼じいの天文台につれていきます。
 話を聞いた遼じいは、最初、「便利なものがどんどんできていったからね。(若い頃努力して身につけたものの)ほとんどがムダな能力となってしまったかもなー」と笑い、三人はそれを聞いてがっくり来ます。
 しかし続いて、遼じいは、皆をキャンプに誘います。さらに、ライターを忘れたふりをし、原始人さながらの、「木の摩擦を使っての火起こし」を勧めます。
 最初は、全然火がつきませんでした。しかし、みんなで案を出し合ってやりかたを工夫していき、ついに発火に成功しました。
 その体験を通じ、技術があれば一瞬でできることでも、苦労して時間をかけて達成する事に意味がある、と皆は理解し、ふたたび元気に勉学・運動に頑張った、という話でした。

 特にこれだけAIが進歩した時代では、このような「学び」に対する根本的な悩みを持つ人も少なからずいそうです。
 そんな中、今回の話は、今シリーズの特徴である、宇宙旅行を活かしつつ、その悩みに対する価値の高い回答案を提示した話だったと思います。
 実際、自分も少なからぬ年を生きて、色々と経験してきましたが、「簡単に得られて使える技術をたくさん持つのも重要である一方、苦労して身につけたものというのはそれとは別の貴重な価値がある」という事をよく実感しています。
 特に、このシリーズでは、羽衣ララに万能の知識を授ける「AI」という存在がいます。
 それも含め、このシリーズの特徴を最大限に活用しつつ、頑張って知識や技術を得ることの意義を分かりやすく伝えた、素晴らしい話だと思いました。