春野はるかがノーブル学園女子寮内で「枕投げ大会」を企画します。ところが、子どもの頃、東せいらと西峰あやかのイタズラで、枕投げにトラウマを持った海藤みなみはそれを許可しません。
その海藤みなみの頑なさを、春野はるかが様々な方法で説得し、最後には海藤みなみも参加しての「枕投げ大会」を実現させた話でした。
アニメで描かれた逸話をうまく取り入れつつ、独自の主題でプリキュア達を活き活きと描くという、上北さんの素晴らしさが随所に発揮されていた話でした。
冒頭、女子寮の親睦をはかるイベントとして「枕投げ大会」を春野はるかが提案します。しかし、海藤みなみは、「認めません。ここは紳士・淑女の学校なのよ」と無下に断りました。普段、春野はるかの言うことなら何でも認めるのとえらい違いです。
隣にいた天ノ川きららは、「やったことないでしょ、みなみん」とその断り方をやんわりと批判しつつ、「ま、中学生になって枕投げなんてガキっぽいかも」と半分同意もしていました。ちなみに、この一言は、ちょっとした伏線になっていました。
さらに海藤みなみは、「みんなとふれあいたなら、今日の”女子寮祭はうってつけよ」と言います。
女子寮祭は、アニメ第9話の「ノーブルパーティー」の女生徒限定版みたいな感じで、さらに野点なども追加されていました。
そして、この話で初めて見せた笑顔で海藤みなみはお茶を点てます。
春野はるかは、それを「ズッズッズー」と音を立てて飲み、「たいへんおいしくちょうだいしました。昼間に優雅な気分を楽しんだ分、夜はみんなで元気にハジけたいですーっ!」と笑顔で言います。
それに対し、海藤みなみは、ハッとしたような表情をしていました。
しかし、寮に戻って、春野はるかが再度、枕投げについて色々な提案をしても、全て却下します。そして、最後に「枕は安眠のための大切な道具です。投げるものではありません!」と一喝して去って行きました。
普段とも、先ほどの野点の時とも、全く違う表情・言い回しです。あまりの態度に、天ノ川きららは「コワー、ここまで一刀両断するとはね」と驚き、春野はるかはショックでポカーンとした表情になって「なんでだろ…」と呟いていました。
それでも諦めきれない春野はるかは、風呂掃除の際に東せいらと西峰あやかに協力を要請します。しかし、そこで意外な事実が語られました。
実は、海藤みなみが「枕投げ嫌い」になったのは、子供の頃、二人がお泊まりに行き、部屋に戻ってきた海藤みなみにふざけて枕を投げつけた事にあったのです。
二人は予想しなかったのですが、海藤みなみは皆のためにお茶を持ってきており、それを落としてしまいました。
. この回想シーンは短いのですが、そこでの三人の描き方は印象に残りました。
それを聞いても諦めきれない春野はるかは、今度は、寮内のみんなにアンケートを取り、多数意見として納得させよう、という作戦を取ります。
その集計結果を模造紙にまとめて夜の談話室に貼っていました。そして、その様子を、柱の影から風紀委員長の如月れいこが見ています。ちなみに、先ほどの風呂掃除の時も、二人に話しかける春野はるかを見て「春野さんっ、何てことを!」と心の中で叫んでいました。
漫画版では如月れいこが、アニメより目立っています。そして、常に春野はるかの事を気にしています。このあたり、今後の漫画版でどのように描かれるかも楽しみにしています。
そのアンケート結果を見た海藤みなみは、妥協して、「わたしはでられないけど、やればいいといってるでしょ、枕投げ大会を」と言います。
そして、食い下がる春野はるかに対し、「そうかしら、傷つく人もいるわ…わたしも…以前に」とついに、これまで言っていなかった、幼少時のトラウマまで語ろうとします。
すると、そこに如月れいこが割って入り、「た…確かに春野さんは困った子ですが…。如月はみた! 会長のために必死で…なんで!?ってくらい一生懸命なんです」と、春野はるかを援護します。
それを聞いた春野はるかは「エッ」と驚き、天ノ川きららに至っては「はるはるの天敵が味方についた!?マジで!?」とまで驚いていました。
しかし、その懸命の説得にも動じることなく、海藤みなみは、「もういいわ。ごきげんよう」と談話室から出ようとします。
すると、春野はるかは、部屋の片隅にあった枕を掴んで、「このガンコオヤジ!」と言いながら、海藤みなみに投げつけました。
そして、オヤジ呼ばわりされて驚く海藤みなみに対し、「わたしは…みなみさんの心からの笑顔をみたいんですーっ!」と涙ながらに叫びました。
それを聞いた、東せいらと西峰あやかも、改めて海藤みなみに謝ります。
すると、海藤みなみは、「そ、そうよ、あなたたちのおかげでほんとうにショックだったのよぉー」と、言って、自分に投げられた枕を、二人の顔にぶつけました。
それを見た、天ノ川きららは「みなみん、いい投げっぷりィー」と言い、それをきっかけに、春野はるかと海藤みなみの「枕のキャッチボール」が演じられました。
そして、海藤みなみの笑顔がアップで描かれ「むかしむかし、檻の中に逃げ込んだ泣き虫の小さな女の子…もう笑えるわね。心の鍵はあいたわ…」という独白が流れました。
続いて、笑顔で「はるか…ありがとう」と言い、春野はるかも満面の笑顔で「みなみさんっv」と喜んでいました。
その二人の肩を抱いて、天ノ川きららが「…てワケで、一件落着ゥv」とまとめていました。
そして、数日後、談話室にて「第一回ノーブル学園女子寮枕投げ大会」が開幕しました。
天ノ川きららも、皆と一緒に枕投げを楽しみながら、「創立以来のおバカイベントだねきっと」と言います。
するとそこに、白金さんがぬっと現れ、かつて、天ノ川ステラが在学中に、枕投げを扇動して寮の風紀を変えた、と伝え、「ええ〜っっママが!?」と心底驚く、という冒頭の台詞に対するオチをつける会話がありました。
そして皆で楽しみますが、最後に、一部の女生徒による「みなみさまのお枕奪い合い」が発生し、三人がそれを見て驚く、というオチになっていました。
アニメの3話と9話の設定・展開を活かしつつ、「枕投げ大会」という形で、それを昇華させた、という感じの傑作でした。
アニメの9話では、海藤みなみが「お化け嫌い」になった理由の回想だけが描かれていましたが、ここでは、それに対する「決着」まで描かれています。
こちらのほうが、東せいらと西峰あやかは、精神的にスッキリしたのではないでしょうか。
アニメ3話でも、如月れいこが心変わりしたのは、ゼツボーグの襲撃がきっかけでした。それに対し、漫画では、そのような非常事態がないなかで、春野はるかの見方を変えています。
別にアニメの表現が不十分なわけではありません。それどころか、十二分に楽しめました。逆に、それだからこそ、それを元に、さらに深い話を描く、上北さんの凄さに、感心させられました。
これまでアニメ・漫画を通して一度もなかった「春野はるかと海藤みなみの対立」を描いた話でした。それを全く不自然さがなく、かつ理由付けも明確でした。そして、対立のみならず、理解し合ったあとの描写も非常に巧いと思いました。
同時に、春野はるか寄りの仲裁役、という位置づけになった天ノ川きららの描写も楽しめました。また、意外な伏線ならびにオチにも感心させられました。
そして、漫画版では七瀬ゆいより存在感がある、如月れいこも、彼女らしい活躍を見せていました。
また、今回の話はプリキュアもディスダークも一切出てきません。アロマとパフも、一コマだけ登場で、二人合わせて台詞は一つという、完全な「日常回」でした。
にも関わらず、海藤みなみのトラウマ解決の描写で「心の鍵があいたわ…」とシリーズの主題をきちんと織り込んでいた事にも感心させられました。
この11年間、いつも面白い漫画版プリキュアですが、今月は、その中でも、かなり上位に来る名作でした。