前後編なので、二つまとめて書きます。
まず大雑把なあらすじから。週刊誌報道でざくろさんがアメリカ移住、という話が出て、それを読んだ四人は動揺。それを見たざくろさんは怒ります。そして、渡り鳥の持っているミュウアクアを巡って戦いが始まりますが、ざくろさんは変身せず、かばったみんとが怪我しても何もしないなど、離脱を示唆するような行動をします。さらに、四人の前でキッシュと「密会」するなど、「裏切り」に近い行動まで取ります。
そして、ついにざくろさんとみんとが「決闘」します。しかし、そのさなかに渡り鳥の持つミュウアクアを巡ってパイとタルトが行動したために戦いは中断。みんとの捨て身の行動でミュウアクアも確保し、最後にざくろさんが、「皆の覚悟を確認するためにわざとやったが、やりすぎだった」と謝り、みんとがざくろさんの胸で泣きじゃくる、ところで終わります。
この話、非常にわかりにくく作られています。その最大の原因は、「ざくろさんの過去」についての描写にあります。まず、ざくろさんの母親と思われる人の手紙から、「二年前にざくろさんは母親の元を離れた・その際、何か感情的な対立があった・現在、母親は海外に『二人で』住んでいる」という情報が表示されます。さらに、回想場面として、「倒れている中年男性の脇で、『どうしてわかってくれなかったの?』と泣き叫ぶ、数年前のざくろさん」が出てきます。
こうやってまとめてみると、「何かの誤解がもとで、ざくろさんの父親もしくはそれに準じる人物が死亡。それを機にざくろはアメリカ(?)にいる(移住した?)母親と継父の元を離れ、一人で日本で生活している」という過去が推定されます。
しかし、これは、録画を止めながら何度か見て初めてできる推定です。普通にTVで見ていて、あの手紙と回想を結びつけて、「過去」を推定する事など、「大きなお友達」でも容易ではないでしょう。ましてや、「本来の視聴者」にはとうてい無理です。「その自分の過去の傷」ゆえに、「報道に動揺する皆が許せなかった」などと言うのですが、当然ながら具体的に何があったかなど分かりません。
というわけで、第35話に出てきた「一人寂しく食事をする幼少時のざくろさん」同様、「断片的で肝心の『過去』が伝わってこない回想場面」になってしまいました。
作る側ではざくろさんの過去について設定していたのかもしれませんが、このような理解しづらい形でそれを表現するくらいなら、何も描かないほうがずっとマシです。
そのうえ、ざくろさんの言動がこれまで描かれていた彼女らしさと縁がないからまた困ります。彼女は肉体年齢こそ15歳ですが、その知性・思考力は明らかに大人です。その「他の四人に比べてずっと大人である」という表現は作中でも何度も描かれていました。それどころか、白金よりも「大人」である事を示す表現すらありました。
確かに、彼女の知的レベルならば、「週刊誌に載っているヨタ話を真に受けて、本当に自分がアメリカに行くなどと考えるなど、愚かな事だ」となるでしょう。しかし、それを普通の小中学生である他の四人に求める事は酷なことです。これまでのざくろさんは、その「四人と自分の差」を的確に認識して行動していたはずなのですが・・・。
さらに、キッシュとの密会ですが、これについて「相手にも感情がある、というれたす等の意見に興味を持ち、いい機会だからさぐってみた」と説明しています。ならば、前回の話でそのれたすや歩鈴の発言を、無下に否定したのは何だったのか、となります。さらに「向こうもいろいろ大変なようね」とディープブルーとキッシュの対立をはじめとする不協和音という「調査結果」伝えているのですが、この情報がこれ以降の話で使われる事はありませんでした。
ざくろさんの過去にしろ、キッシュと話した成果にせよ、話全体に生かされていれば、この話もかなり面白くなっていたかもしれません。しかし、それらの描写が雑なため、理解しにくいだけの話になってしまいました。
もう一つ、ざくろさんとみんとの絆についても表現したかったような狙いもあったようです。しかし、こちらについても、みんとのざくろさんへの「想い」の強さについて、きちんと描いていないために、伝わるものがありませんでした。
とまあ、普段に増して辛口になってしまいましたが、いいと思った点もいくつかありました。
まず、この話は青山も蒼の騎士も出てきません。そのせいか、いちごから「ラブコメ思考」が消え、誤解に揺れる皆や、冷たく突き放すような発言をする白金に対し、ズバズバと核心をつく発言をし、皆をまとめます。久しぶりに「強いいちご」を見る事ができました。
あと、歩鈴のギャグが絶好調。「アメリカ行き」の話が出た時にいきなり「メジャーで首位打者になる」とボケます。さらにミュウアクア捜索の際にも、「感情が昂ぶった時に体が光る」だけに頼るのは良くない、と主張し、いきなり「ミュウアクアのにおい」で探そうとし、れたすに「においを知っているんですか?」と突っ込まれたりもしていました。さらに、ギャグではないのですが、ざくろさんの移住説に「自分も一緒に行く」と言ったみんとを見て、「二人がいなくなれば『エイリアン』に勝てるわけがない。自分は負け戦はしないので、その時は一緒にやめる」などとかなり冷静かつ打算的な一面を見せたりもしていました。
「ミュウミュウ」は漫画・アニメともども、「ここをもう少しきちんと作っていれば・・・」と思う話が多々あるのですが、この二話はその最たるものだと思っています。