「ハートキャッチプリキュア」全般感想

 キャラデザなど、これまでのシリーズとかなりの違いを見せた、シリーズ7作目の本作は、様々な点で驚かされるとともに、強く心に残る作品となりました。
 自分的には、本作品の特徴として、「深く掘り下げたキャラ作り」と「常に笑いを取る」の二つが挙げられると思っています。そのあたりを中心に語ってみます。

 まず、「笑い」のほうですが、もちろん「プリキュア」シリーズは、歴代主人公にボケ系のキャラを配するなど、常に「笑い」を意識してはいました。特に、前作「フレッシュプリキュア」では、「お笑い担当」とも言える敵幹部・ウエスターを設定し、ギャグ話を何話も作っていました。
 しかし、本リーズは、その「笑い」に対するこだわりが圧倒的に強かったと思っています。
 その一つは、本来はシリアスなはずの戦闘場面に積極的にギャグを取り入れた事でした。OPで見た時から印象的だった、「プリキュア大爆発」は、最後にはあの凛々しい、いつきまでもがギャグ顔に加わるほどのすごい技でした。
 また、驚異的な言語センスで衝撃を与えた「ブロッサムおしりパンチ」は、何とラスボスを倒す最強技「プリキュアこぶしパンチ」として昇華(?)しました。最終決戦でラスボスを、こんなふざけた名前の技で倒すなど、前代未聞でしょう。
 もう一つは、いったんギャグに走らせると、留まる所を知らない、えりかという存在でした。変身前の日常パートはもちろんですが、変身後も様々なギャグを繰り広げました。
 それどころか、「部屋の掃除をするために変身する」などと、プリキュアの能力そのものまでギャグにしてしまった話すらありました。
 そして、最終決戦における敵の最終形態との闘いにおいて、「14歳の美少女」などと笑いをとっていました。「こぶしパンチ」もそうですが、日頃から積み上げてきたものがあったので、最終決戦でも違和感なく、ギャグを入れられた、という事でしょう。
 それほどまでに、本作のギャグ要素は質も高く徹底されていました。

 そして、「深く掘り下げたキャラ作り」ですが、一人一人のキャラの作り込みの深さには色々と感心させられました。
 主人公達はもちろん、周囲の人々や家庭環境に到るまで、細かく作りこまれていました。メインキャラ二人の両親について、それぞれなれそめを設定していた、というのはシリーズで初だったと思います。
 主題の一つである、主役である、つぼみとえりかが、当初は劣等感に苛まれながらも、自分にないものを持つお互いと出会い、成長していく、という過程の描き方は特に巧いと思いました。
 えりかが、つぼみを引っ張っていく、というのが基本的な構造です。それによって、つぼみが積極性などを身につけていくわけですが、その一方で、引っ張りながらも、つぼみの影響を受け、協調性などを身につけていく、えりか、という形で相互に影響を与えていく、という位置関係は面白いと思いました。
 また、いつきにおいても、「家の事情で男装して武道をやっており、可愛い物が好きな本来の自分を隠すことに疲れている」という初期設定がありました。そこから「可愛い物好き」を少しずつ表に出していき、最終回では女子の制服で学校に通うようになるわけです。
 そのあたりの変化を描きつつ、武道に対する熱意も並立させて描く、というのが面白く、かつ彼女の個性を引き立たせていたと思いました。
 学園祭を描いた第36話は、特に面白かった話しでした。その理由のとして、彼女たちの変化・成長があのファッションショーとして結実した、という構造があったからだと思っています。

 一方、プリキュア以外の一般人キャラについても、綿密に作りこまれていた人が少なからず存在しました。特に、えりかの姉かつ、ゆりの親友という位置づけの、ももかは随所に良さが出ていました。
 からかうような事を言いながら、肝心なところでは、妹を認める、というあたりの姉妹描写は印象に残りました。また、短いアイコンタクトで、ゆりと意志の疎通をする、という場面が少なからずあり、面白い形で「友情」を描いていたと思いました。
 また、クラスメートたちも、志久ななみや、番ケンジを筆頭に、印象に残るキャラが少なからず存在しました。
 敵キャラでも、三幹部はもちろんですが、雑魚キャラであるスナッキーも、「キイ」だけの台詞しかないにも関わらず、随所で印象に残る事をやっていました。
 その集大成と言えるのが、映画版でした。オリジナルキャラである、オリヴィエとサラマンダー男爵の描写には、そのキャラ作りの強さが存分に発揮されていました。そのため、この二人は、過去の映画でのゲストキャラとは全く異質の存在感を持つことになりました。
 その結果、映画の話も非常に重厚になり、過去のシリーズとはケタ違いの面白い作品となったわけです。

 ただ、このキャラ作りについては、全てが完璧、というわけにではありませんでした。特に残念だったのは、ゆりおよびその周囲でした。サバーク博士との親子設定は、結局、中途半端なまま終わってしまいました。また、父親の食器を用意する母を、心のなかで皮肉を言う、ゆりという初期設定が、その後どうなったかも分からないままでした。
 ダークプリキュアも含めた、この月影親子については、何らかの構想はあったのでしょう。そして、それを描ききれず放置した、という印象がありました。
 このあたりがきちんと描けていたら、より素晴らしい作品になっていたと思います。それだけに、勿体なさを感じました。
 また、他のキャラについても、かなり良く描かれた人がいた反面、もっとじっくり描いてほしかった人もいました。
 たとえば、ラスボスであるデューンにしても、「憎しみ」を主張する割には、彼が何を憎んでいるのかが分かりませんでした。他にも、「この話をやるなら、このキャラを掘り下げた話をやってほしかった」と思うことが何度かありました。
 そして、話づくりの方も、前半はかなり安定してましたが、後半には雑な話や、不要な設定も散見されました。例えば、つぼみの妹設定は、終わってみれば、ほとんど意味がありませんでした。

 そのような残念な部分もありましたが、全体的に見れば、かなり質が高かった話だと思っています。
 特に、絵についても、かなり品質が高く、いわゆる「邪神絵」だった話はほとんどありませんでした。最終回なども、話的には残念な部分もありましたが、絵的には完璧と言えるほどの素晴らしさがありました。
 というわけで、自分にとって、この作品は、末永く心に残るものとなりました。また、どこかで彼女たちの活躍を見たいものです。

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