「ドキドキプリキュア」アニメ10話と漫画版6話

 「ドキドキプリキュア」のキャラ設定は他のシリーズにない独特のものがあります。
 この世界で最初にプリキュアになる相田マナは、学校のカリスマ的存在の生徒会長です。そして、二番目にプリキュアになる菱川六花は、相田マナの幼馴染で、全国トップクラスの学力を持ち、かつ生徒会書紀として彼女をサポートします。
 三番目にプリキュアになる四葉ありすは、超大企業の経営者の娘かつ、すでに自ら社長もやっており、かつ武術の達人です。
 さらに、第1話の時点ですでにプリキュアであり、異世界であるトランプ王国からやってきた剣崎真琴は、ドームでのライブが一瞬でチケット完売になるほどのスーパーアイドルです。

 歴代プリキュアには生徒会長・秀才・財閥令嬢・アイドルもそれぞれいます。ちなみに、プリキュアに変身した生徒会長はマナを含め6人いました。
 ただ、このような属性の強烈なプリキュアを揃えたのはこのシリーズくらいです。
 もう一つの特徴は、他のキャラがそれぞれマナに強い思い入れを持っている、という事です。
 彼女の人を惹きつける力は並大抵でなく、敵のラスボス「キングジコチュー」の娘であるレジーナも、彼女に「一目惚れ」してしまうほどでした。漫画版ではそれを「友ハーレム」と表現していました。

 というわけで、敵味方問わず、マナを意識しているわけですが、その中で、もっともその想いが強いのは、4歳の時にマナ家のすぐ近くに引っ越してきて以来のつきあいである六花です。
 その六花の心が特に「ドキドキ」したのは、相田マナがプリキュアになる前から大ファンだった真琴が同じクラスに転入してきた時でした。
 アニメ版と漫画版がそれそれあるのですが、ともに非常に深い内容で、強く引き込まれたものでした。

 アニメでは、同じクラスに転入し、世界が違うために突飛な行動をしたり、マスコミに追い回されたりする真琴を、六花が懸命にフォローします。
 特にマスコミを一喝して退散させた描写は、彼女がいかにしっかりしているかがよく伝わってきました。
 そうやって、真琴を全力で助ける一方で、彼女と相田が仲良くしているのを見て胸がキュンとなったり心がチクリとなる、という描き方は強く印象に残りました。
 視聴中は、「この話の流れだと、心の欲をジコチューに付け込まれる役目はどうみても、六花だよな、まさか、彼女が…」と本気で心配したものでした。
 また、その六花の悩みに気づいて、車の中で話を聞いて気遣う四葉ありすの描き方も印象に残っています。
 結局、ジコチューに付け込まれたのは、真琴の応援団長でした。彼も、真琴を応援するために他人から守ららねば、という気持ちと、彼女と個人的に親しくなりたい、という葛藤を付け込まれます。
 それを見た六花が「応援団長さんの気持ちを利用して」と言います。この「応援団長の気持ち」が自分の気持ちと一致しているからこそ、ほとんど面識のない応援団長の気持ちがわかったわけで、この描き方にも感心させられました。
 そして、戦闘が終わり、真琴も四葉ありすも自分と同じ「胸がキュンとなったり心がチクリとなる」という事を知り、安心する、という終わり方でした。

 一方、漫画版も、独特の視点で、六花の心境を描いています。
 マナと真琴が仲良くしているを見て心がざわついた六花は、図書館に行って「嫉妬」について調べます。
 そして、「エンヴィー型嫉妬は他人の持つ良いものをほしいと思う感情」「ジェラシー型嫉妬は、自分のものを誰かに奪われる恐怖からくる不安感」と理解し、「両方かな…わたし」とうかない表情になります。
 自分の感情が気になると、心理学の本で調べ、自己分析をする、という六花の頭の良さを描きつつ、その心境をわかりやすく表現した、というのには感心させられました。
 その晩、彼女夢にマナが出てきました「六花、六花、胸が苦しいの?」と尋ね、「なんで、そんなこと、全然」と答えるのも無視して「わかった、あたしがなんとかする」と言って抱きしめたあと、キュアハートに変身します。
 そして、「マナをなくした悲しい六花!このキュアハートがあなたの胸のドキドキ、取り戻してみせる!」と言って六花に必殺技「マイ・スイートハート」を放ちます。
 すると、六花の両目がハートになり、「うーん、気持ちイイ」と言いながら「浄化」されます。そこで目が覚めるのですが、先に起きていたラケルに「幸せそうだった!」と言われていました。
 ちなみに、ここでの「あたしが何とかする」というのはトラブルを見たマナがよく口にする決め台詞です。
 なお、16年続いている漫画版プリキュアですが、このように、夢の中に仲間のプリキュアが出てきて本人に必殺技を放つ、などという描写は他には一度もありません。

 そして、真琴の歓迎パーティーが始まります。席順でマナは六花と真琴に挟まれる形になり、六花は「久しぶりだよ…マナの隣」と喜びますが、マナは相変わらず、真琴とばかり会話しています。
 それを見ながら六花は「近くにいるはずなのに、マナがすごく遠くにいるみたい…」と寂しげな表情になります。そして、昨晩の夢を思い出し、「はやく…はやく…何とかしてよ…マナ…」と心の中で助けを求めます。
 もちろん、マナがそれに気づくことはなく、相変わらず真琴の世話をしています。
 それを見た六花の胸は高鳴り、「わすれちゃったの…マナ…」と言って立ち上がります。続いて、「ずっと…そばにいてくれたら…最高だよって…六花、六花っていつも真っ先に呼んでくれたのに…」と目に涙をためながら言って、部屋から出ていってしまいました。
 それを追った四葉ありすの言葉で冷静さを取り戻し、よく朝もマナと一緒に通学します。そして、最後に心のなかで「今回の件での一番の発見はね。やばりマナが大好きってことなんだよ」と確信を込めた笑顔でつぶやく、という形で終わりました。

 漫画版の全般的な傾向として、戦闘描写を必要最小限もしくはゼロにして、プリキュア同士の人間関係を描く、というものがあります。
 そんな中でも、この話は描き方が際立っています。
 アニメの設定や描写を見て、六花のマナに対する想いを作者が理解したゆえの事だろうと思っています。
 ちなみに、この後も、シリーズが続くたびにプリキュアは増え続けました。
 その結果、「プリキュア大集合」が描かれる機会も増えました。そのとき、違いシリーズのプリキュア同士がペアになる事もあるのですが、この六花とマナ、並びに「S☆S」の咲と舞は、基本的に常にペアで描かれています。
 何年たっても変わらない上北さんのこだわりには、いつも感心させられています。