「プリンセスプリキュア」第12話・第33話・第41話・第48話

 いよいよ「ヒーリングっどプリキュア」の放送が再開されることもあり、この「おさらいセレクション」も最後になります。

 「プリンセスプリキュア」は、独特の設定が色々ある、個性的なシリーズです。
 たとえば敵組織においても、しょっちゅう位置関係の変化が発生し、そのたびに敵キャラの個性が丁寧に描かれていました。
 そして、一番独特なのは、「変身しないプリキュア」がいることでした。

 第1話は、最初にプリキュアになる春野はるかが、全寮制であるノーブル学園に入寮する所からはじまります。
 その描写のなか、続いてプリキュアになる海藤みなみや天ノ川きららも登場するのですが、春野はるかについで出番が多かったのはこの二人ではなく、同室の七瀬ゆいでした。
 なぜ彼女がここまで出番が多いか、というのも伏線になっています。

 序盤の最初の山場である10・11話において、異世界で敵幹部・クローズと決戦を行うのですが、その異世界に、七瀬ゆいも巻き込まれてしまいます。
 そして、ルームメイトの春野はるかたちがプリキュアであることに驚きつつ、彼女たちを手助けしました。
 そして、続く12話の冒頭で、プリキュアのミーティングに参加し、海藤みなみに「これからは、私達の仲間ね」と言われ、天ノ川きららにも「よろしくね、ゆいゆい」と仲間としての挨拶をされました。
 それ以降、基本的にプリキュアの三人(後に紅城トワが加わって四人)と行動をともにするようになります。
 そして、戦闘時は、一般市民の避難誘導を中心にプリキュアに協力しました。
 そのため、このシリーズは、戦闘のときのプリキュアは四人なのに、日常描写ではプリキュアが五人、という描かれ方をするようになりました。

 そして、仲間になった12話ですが、これは極めて異色の話です。
 モデルとして活躍している天ノ川きららに、なぜかTVリポーターの仕事が入ります。
 乗り気でなかった彼女ですが、リポート先が、大好物のマーブルドーナッツであることを理由に引き受けました。
 そこで、一緒にレポートするのが、アイドルの一条らんこでした。
 この回が初登場なのですが、天ノ川きららへ異常なライバル心を燃やし、印象に残る言動を連発します。
 そのライバル心に当初は呆れていた天ノ川きららも、途中からは、共感みたいな心が芽生えていました。
 そして、最後は、着ぐるみで天ノ川きららと競走をする、という展開になるのですが、自らデザインした「根性ドーナッツくん」を身にまとい、アイドルとは思えない姿で、勝利への執着を見せます。
 最後には、「あしたのジョー」のパロディまでやっていました。
 また、冒頭の「これからは仲間」という言葉の通り、春野はるか・海藤みなみ・七瀬ゆいは常に三人並んで、その収録の様子を見ていました。これも印象に残っています。

 ところで、このシリーズは、敵幹部が人間の夢を閉じ込めて絶望に変換させ、怪獣「ゼツボーグ」を生み出す、という設定になっています。
 この話では、当然ながら、一条らんこが敵の標的になります。そして、敵幹部・シャットが「あなたの夢を見せなさい」と言います。
 ここから「標的になった人の夢が描かれる」→「それを敵幹部が絶望の檻に閉じ込めてゼツボーグを生み出す」というのが、このシリーズの基本設定です。
 そのパターン通りに、一条らんこは「トップアイドルよ」と言うのですが、一連の言動を見ていたシャットも、プリキュア四人も驚いた表情を見せます。
 そして、シャットが「コメディアンでは?」と質問すると、怒って「アイドルよ!」と言い返しました。
 結局、直後に夢は封じられるのですが、この場面での敵幹部との「論争」という描写にも驚かされたものでした。

 そして、この「強い夢を持つ人は、敵の攻撃に反応できる」という設定が、33話に引き継がれます。
 この回は、プリキュアたちが海水浴に行くものの、泳げない紅城トワが、その秘密を隠し通そうと葛藤するのが主題となっています。
 その心境をいち早く見抜いて、気遣ったのが七瀬ゆいでした。
 そして、二人で海辺を離れ、彼女の不安をサポートします。
 その時に現れた、敵幹部・ロックに「絶望の檻」に閉じ込められるのですが、「私の夢は渡さない」と抵抗します。
 結局、抵抗しきれなかったのですが、この描写は強く印象に残りました。

 そして第41話を迎えます。シリーズは終盤であり、ある意味恒例の「最後に、プリキュアを一人ずつ主人公にした話をつくる」の第一弾でした。  絵本作家になる夢を実現させるためにも、絵画コンクールに出展しようとするのですが、何を描けばいいのかがわからず、一時期は出展を断念しかけます。
 そこで気晴らしに公園に行くと、彼女が絵本作家を目指すきっかけとなった、望月先生が、小学生たちにのびのびと絵を描くことを教えているところにでくわします。
 そこに、敵幹部のストップとフリーズが現れ、小学生たちの夢を奪おうとします。そると、その子どもたちをかばって、自分が夢を奪われ、ゼツボーグが誕生してしまいます。
 ただ、普段は、ここで、絶望の檻に閉じ込められる人の夢が描かれるのですが、この話に限っては、それが省略されています。
 そして七瀬ゆいは、33話に続き、夢を奪われようとする所から抵抗しますが、やはり絶望の檻に閉じ込められてしまいます。しかし、絶望の淵から夢を取り返し、プリキュアの闘いを見つつ、脱出を試みました。
 結局、脱出はできなかったものの、プリキュア四人の勝利により、解放されます。その際に、絶望の檻に閉じ込められるときにはなかった、「プリキュアと一緒に過ごした経験を絵に残す」という、新たな夢が描かれました。
 第1話の彼女も含め、「夢を奪われて閉じ込められる」→「プリキュアの勝利によって、持っていた夢を取り戻す」がこのシリーズの基本設定でした。
 ところが、この話では、夢を見失いつつあった七瀬ゆいが、「絶望の檻」に閉じ込められながらも、抵抗し、かつプリキュアの闘いを見ることによって、新たな夢を手に入れる、という展開になっています。
 この描き方にも驚いたものでした。
 また、このシリーズの基本ルールとして、話の最後に、「レースの背景とドレスアップキー」が登場する、という決まりがあります。
 しかし、この話だけは、七瀬ゆいの笑顔で終わり、レースの背景は出たものの、ドレスアップキーは、描かれませんでした。
 これにも、「変身しないプリキュア」である彼女へのリスペクトを感じたものでした。

 そして、48話を迎えます。
 敵幹部・クローズが、七瀬ゆいをノーブル学園の全員を「絶望の檻」に閉じ込めます。
 しかし、「絶望の檻」に抗い続けてきた七瀬ゆいは、三度目の正直で、ついに「絶望の檻」を中から破りました。
 そして、閉じ込められている他のノーブル学園の面々も助け出し、彼女の力で形勢を逆転させます。
 34話や41話を見て、「なぜ七瀬ゆいに檻を破らせないのだ?」ともどかしく思っていたのですが、この48話に向けて、力を矯めていたわけです。
 その壮大な構想に、驚き、感心させられました。
 なお、この終盤になって、第12話で大活躍した一条らんこも再登場し、少ない出番ながら、強烈な存在感を毎話見せていました。それも印象に残っています。

 通常、プリキュアは新アイテムを獲得することによってパワーアップします。それに対し、七瀬ゆいは、アイテムなしでパワーアップをして、プリキュアの勝利を引き寄せました。
 ある意味、「変身しないプリキュア」にしかできない、成長の描き方と言えるかもしれません。

 というわけで、七瀬ゆいを軸に、「プリキュアプリキュア」を論じてみました。
 もちろん、他のプリキュアである、春野はるか・海藤みなみ・天ノ川きらら・紅城トワの四人の描き方、さらには七瀬ゆいを加えた五人の人間関係や友情の描き方も非常によく、本当によくできたシリーズだったと思っています。