上北ふたごさんが、なかよしで連載している「プリンセスプリキュア」の1巻が出ました。
冬に出た「プリキュアコレクション」では、無印と「Splash☆Star」が1・2巻同時発売されましたが、プリキュアの単行本で「1巻」が単独発売されるのは、2006年以来となります。
「なかよし」などの予告で「描きおろしあり」となっていた時は、2005年に出た無印の単行本のように、アニメの筋立てを追った話が追加されるのだろうな、と思っていました。
しかしながら、実際に手にとって読んだところ、その予想を大幅に覆される話が掲載されていました。
その描きおろしですが、七瀬ゆいが絵本のプロットをプリキュア三人とミス=シャムールに話す、というところから始まります。
その内容は、ミス=シャムールが「才能アリマース!」と褒めるほどの質の高さでした。
それを喜びつつ、春野はるかは「わたしたちがプリキュアってコト知ってから、全力でサポートしてくれているの。わたしたちも、なにか、ゆいちゃんの応援ができたらいいな〜」と心のなかで言います。
この、日頃プリキュア活動を手伝ってくれる七瀬ゆいへの感謝ならびに、それゆえに彼女の夢を手伝いたい、という心情描写にまず感心させられました。
そして、七瀬ゆいは、次回作として構想を練っている「プリンセス物語」のアイディアを練っているもの、話に詰まって挫折中、という事を話します。
それをきっかけに、皆がいろいろな「アレンジ案」を話し始めます。
皆、色々な案を出すのですが、その中で、「仕事視点」から人魚姫や七夕の織姫にツッコミを入れる、天ノ川きららの描写が特に印象に残りました。
そして、プリキュア三人が主演で「物語」が始まります。
配役は、春野はるかが、オリジナルキャラの「花の国の花花姫(ファーファひめ)」で、海藤みなみが人魚姫、天ノ川きららが織姫と、それぞれのバックグラウンドを活かした設定となっています。
人魚姫と織姫については、物語開始時点では、基本設定通りなのです。それを花花姫の活躍で、運命を変えてハッピーエンドにする、という展開でした。
なお、既に人魚姫は声と引き換えに人間の足を得ているので、会話ができません。代わりに、なぜかタコになったミス=シャムールが、人魚姫の心を伝える、という設定になっていました。
また、魔女役はシャットがやっているのですが、「声と引き換えに人間の足を得る薬」が、「足の素」という名前で、容器も味の素そっくりだったのには笑いました。
さらに、せっかく地上に上がった人魚姫でしたが、王子には、既に恋人がいました。その「恋人役」はクローズが演じています。この設定にも驚かされました。
その「失恋」した人魚姫と、天の川の洪水で彦星と会えない織姫はともに落ち込んでいます。
その二人のために、花花姫は、二人の力になるために、「ある花」を育てます。その事を二人に伝えるのですが、相も変わらず落ち込んだままです。
その時、「物語」がいったん止まり、舞台がノーブル学園の寮に戻ります。
そして、落ち込んでいる二人に対し、春野はるかが、「本当にこのままでいいの?大好きな人のコトもあきらめちゃうの?」と言います。
それを見た天ノ川きららが「おちつけ、はるはる。お話じゃん」と言い、海藤みなみが「すっかり物語に入り込んじゃったのね。うふふ」と言いました。
続けて、七瀬ゆいへが、「ってゆーか、はるかちゃん。これから読もうとしていたセリフそのままだった!」と言いながら物語のプロットを見せます。
それを見て天ノ川きららが「ホントだ!花花姫にシンクロした!」と驚き、海藤みなみが「はるか、そのものね。観察力がすごいわ」と感心していました。
このあたりの掛け合いも、四人のキャラが非常に上手く描かれいると思いました。
そして、再び物語に戻ります。
先ほどからの続きで、落ち込んでいる人魚姫と織姫に対し、花花姫が「運命は変えられるよ、自分のキモチ次第で!」と言い、それを聞いた二人はハッとなります。
この「運命は変えられる」という台詞を見た時は、8年前に同じことを言った、花花姫と同じ眉毛をしているプリキュアの事を思い出したりしました。
そして、花花姫が育てた花を貰って元気を取り戻した織姫と人魚姫は、ともに恋を叶えます。
ちなみに、織姫は、花の力で生み出された巨大な蝶に乗って天の川を渡り、彦星と再会する、という流れで、いずれもハッピーエンドになりました。
一方、人魚姫は、「誓いの言葉をのべるんだね」という「ロック神父」のもと、結婚式を挙げる王子とクローズのところに、花花姫が育てた、サンパギータを投げます。それを見た王子が、その花言葉から、自分を助けたのは人魚姫だった、というのに気付いて愛を誓う、という展開でした。
そして、二人が花花姫に感謝し、三人の満面の笑顔で、物語は終わりました。
これで無事に話が完結し、三人は、七瀬ゆいを囲んで喜びます。そして、次の話は、花花姫の恋物語を、人魚姫と織姫が手伝うという話にしよう、という事になりました。
それに喜んだ春野はるかが、翌日、いつものように、学園の花壇を手入れします。そこに、「コンンニチハ、素敵な花だね」と言いながら、カナタ王子とおぼしき青年が話しかける、という後半の展開への伏線、みたいな形で話は終わりました。
11年間で初めてとなる、上北ふたごによる、プリキュアキャラを使った「スピンオフ作品」でした。
そのキャラの描き方の深さには心底感心させられました。
また、童話絵本を出版している上北さんならではの、ファンタジー世界が描かれており、うまくプリキュアと童話世界を融合させていると思いました。
すでに書いたように、「なかよし」掲載の漫画も、非常に深くて面白く、この調子が一年続けば、このシリーズは、秀作ぞろいの漫画版の中でも、特に素晴らしいものになるのでは、と思ったほどでした。
今から、第2巻が非常に楽しみになっています。