映画館で観た時から、プリキュアシリーズではケタ違いの名作だと思っていました。そして、改めてDVDで観て、その完成度の高さを再認識しました。
今更ではありますが、他のプリキュア映画とは、話の構成が抜本的に違います。DX3を含む他作品では、日常描写は冒頭の導入部分に限られます。後は、舞台となる世界の紹介および戦闘が八割以上を占めています。
考えれば当然の事で、子供向け映画を1時間半も流す以上、「プリキュア」が闘う場面をふんだんに使わないと飽きられてしまいます。「5」から導入して定番となった「ライトで応援」も、子供たち関心を惹きつけるためのものです。
それに対し、この作品は、「プリキュア」の出番よりも、つぼみ・えりか・いつき・ゆり達の出番のほうが多いのでは、と思うくらい戦闘が短く描かれています。
そして、彼女たちの描き方も、「これまでの出会いを通じての成長・変化」というテレビシリーズの主題そのものです。それだけ、作り手には「闘いのような派手な演出を短くして、各登場人物を描くだけでも、子供たちを退屈させない話が作れる、という自負があったのでしょう。
そして、今回のゲストキャラである、オリヴィエとサラマンダー男爵に対しても、同じ方法で内面を深く描いてます。
「人の心」に関心を持ったゆえにデューンから追放され、彼および封印したキュアアンジュへの憎しみの心を持ちながら、サラマンダーは400年もの時を過ごします。しかし、人の心の関心ゆえに、封印を解いたオリヴィエに対しては、初対面の時から、特別な感情を見せていました。
たとえば、封印された部屋から出る際に敷居をまたぐのですが、そこで、サラマンダーはオリヴィエの手を引き上げて、敷居につまづかないようにしています。この細かい描写にも、サラマンダーの人となりが表れていると思いました。
その後、自らの闘いのためにオリヴィエに狼男の力を与えるわけですが、その一方で、人間的成長を素直に喜ぶなど、「父親らしさ」をところどころで見せていました。
そして最後に、憎しみの力で闘った彼が、オリヴィエの自分に対する想いで闘いを諦めています。これは最終決戦の際に主題として描かれた「憎しみを愛の力で凌駕する」に通じるものがあるという事に、今になって気づきました。
その一方で、オリヴィエのサラマンダーに対する心の描き方の上手さにも改めて感心しました。特に、モン=サン=ミッシェルの闘いで、最初は「あんた」と呼んでいたのが「男爵」となり、最後に「父さん」と変わった、という所は、彼の心理がよく伝わってきました。
闘いが終わった後の、悲しむオリヴィエ、目を覚ましてまず「プリキュアめ、次は必ず俺が勝ってやる」というサラマンダー、それを聞いて笑い転げたあと、また旅に出よう、というオリヴィエの描写も強く心に残るものでした。ED終了後の、新聞を読むサラマンダーと、とあわせ、完璧と言えるほどの締め方でした。
一方、プリキュア側ですが、冒頭で書いたように、シリーズの主題である、「コンプレックスからの脱却と成長」の到達点について、各キャラそれぞれ描いていました。
つぼみについては、オリヴィエに対する言動でそれを表現していました。えりかを初めとする、色々な人との自分の関わりで得たものを、オリヴィエに与えている、というのがよく伝わりました。
そして、戦闘に入ったところでオリヴィエをかばって、マリンシュートを受け、髪がほどける場面があります。それによってオリヴィエは正気を取り戻すのですが、その際、自分も痛みを感じているにも関わらず、まず最初に「怪我はありませんか?」とオリヴィエを気遣った事には改めて感心させられました。
次に、えりかですが、服を作りながらオリヴィエと話している場面では、彼女が過去のコンプレックスを認めながら超克し、現在のファッションデザイナーを目指す心境に至った事を巧く描かれていました。一方、つぼみの変化について「おしゃれして、いろいろ変わったかど、いいところは最初から何も変わっていないんだよね」と評したのも、印象に残りました。
そして、いつきが、過去の自分とオリヴィエを対比する会話でも、いつきの昔の悩みと、それを乗り越えた今に対してどのように自覚しているかがよく分かりました。
ゆりについては、あまりそのような描き方はありませんでした。ただ、オリヴィエをモデルとして泊める話をするときに、ももかとアイコンタクトを交わした場面は、TVであまり描かれなかった「親友設定」を上手く描いており、感心させられました。
すでに映画館でも二度観てはいましたが、DVDで見なおして、あらためて優れている映画である事を再認識しました。もし可能ならば、ぜひ「映画版ハートキャッチプリキュア第2弾」をやってほしいものだ、と思いました。