沢泉ちゆが、陸上の大会直前に不調に陥ります。それを、花寺のどか・平光ひなた・ペギタン・ラビリン・ニャトランの応援によって克服した、という話でした。
話そのものだと、スポーツものの定番、という感じでした。しかしながら、一つ一つが本当に丁寧かつ精緻な描写であり、非常に素晴らしい話になっていました。
話の冒頭が、朝6時に起きる沢泉ちゆで始まります。代々続く旅館の家なだけに、極めて古い純和風の部屋です。そして、非常に整然かつ物が少ない、という印象的な部屋でした。
この部屋の描き方からも、沢泉ちゆの為人が伝わってくる、というのが凄いと思いました。
そして、部活の描写になるのですが、当初、好調だった沢泉ちゆが、益子道男が見せた、ライバル選手がさらに上の成績を挙げた写真により、調子が狂い始めます。
ここで、「意識していないと言ったら嘘になるけれど…」という言い方に、「ライバルを意識したらまずいとわかっているけど、ついつい意識してしまう」という心境が伝わってきており、上手いと思いました。
また、その過程として、前回の話で、益子道男から花寺のどかを守る事だけが目的という心理状態で県記録を出したことから、この不調が繋がっている、というのも精緻な作りだと感心させられました。
さらに翌朝、花寺のどかと平光ひなたは、早起きして、沢泉ちゆのランニングにつきあいます。
前回もそうでしたが、仲間のうちの一人が困った事になると、当然のように、その彼女を応援する、という感覚が、三人にできている、というところに、このプリキュアチームならではの特徴があると思いました。
しかも、花寺のどかと平光ひなたが、事前に相談したわけでないのに、同じ行動を取り、それゆえに、お互いに奇妙な反応で「偶然」と主張した、という描写も面白いと思いました。
そして三人で走るわけですが、花寺のどかもしっかりついていっています。
前々回では、二人の走りについていけなくなりそうなところで踏ん張り、前回はかなり走れましたが転んでいました。
そうやって少しずつ、走ることに慣れ、さらに朝にランニングする習慣をつけた事によって、二人と一緒に走れるようになった、という彼女の回復ぶりの描き方の丁寧さにも感心させられました。
そしてしばらく砂浜を走り、そこで、沢泉ちゆが走り高跳びをやるようになったきっかけが話されます。
それは、幼い頃に海で泳いでいて、海と空が一体化したような風景に感動したから、という事でした。
「水のプリキュア」という設定を活かし、かつ、このシリーズの主題である「自然の美しさ」に触れながら、このような回想を描いた事にも、このシリーズの「軸」が極めて太く、しかもぶれないという事が伝わってきました。
さて、不調が続く沢泉ちゆに対し、ペギタンは休養を勧めます。しかし、その心遣いに感謝しつつも、練習に向かいます。
同じことを、花寺のどかと平光ひなたにも言われていたのですが、「今はとにかく跳びたいの。そういうのって、古いのかな」と、二人の意見を正論と認めつつも、自説を貫いてほほえみます。
その笑顔を見た二人は、何も言えなくなった、というこの描写も非常に心に残りました。
あと、ここで休養を勧めるときに、花寺のどかが「無理しないで」と普通に言ったのに対し、平光ひなたが「記録が出なくても死ぬわけじゃないし」と言ったのも、為人がよく描かれていると感心させられました。
また、沢泉の決心を聞いて、徹底して応援しようと、ニャトランの協力も得て、応援旗を作ります。そこで、ニャトランが誤字を刺繍する、などという小ギャグを入れ込んでくるとことも上手いと思いました。
試合当日、本当は隠れていなければならないペギタンが声援をしてしまい、二人が取り繕う、というプリキュア定番な描写もありました。そこにも、ペギタンの沢泉ちゆに対する想いの深さがよく描かれていると思いました。
そこから戦闘になるのですが、高い氷の壁を作ったメガビョーゲンに対し、沢泉ちゆが走り高跳びの要領で壁を超えてプリキュア・ヒーリング・ストームで勝利します。
この戦闘でも、沢泉ちゆは空を意識していました。今回、途中で何度も空の描写が入っており、主題の一貫性みたいなものを感じました。
そして、大会はメガビョーゲンのために中止になったものの、沢泉ちゆは、無観客の会場で、見事、高跳びを成功させます。
喜んだ二人は、沢泉ちゆに抱きつきます。そこで、お祝いに何を食べようか、という話になるのですが、彼女は「シラスおろし」と言いました。
海辺の観光地でもある「すこやか市」の名産なのでしょうか。この選択からも、沢泉ちゆの為人がよく伝わってきました。さらに、それに対して、平光ひなたが「DNA」とボケて、花寺のどかが「DHAでしょ」とツッコミを入れる、という締めの描写も印象に残りました。
沢泉ちゆのスランプから克服を、一片のムダもムリもなく流れるように描き、本人も応援する二人と妖精の個性もふんだんに描かれていたという、非常に巧く、かつ筋の通った話でした。
その一方で、なんの脈絡もなく、ビョーゲンズでは、シンドイーネが「自分がキングビョーゲンのハートを射止められるかどうかの、ダーツ型占いの練習」などという非常に斬新かつわけのわからず、かつ本編と全然関係のないことをやっていました。
その描写も強く印象に残りました。
次回は、平光ひなた話です。彼女の得意なファッションが軸になるようです。
彼女が何を考え、また友達二人とどんな思い出を作りたいのか、などと色々気になっています。今から大変楽しみです。