プリキュアコレクション「S☆S映画版 チクタク危機一髪」

 表紙は本当に最高なのですが、アニメ映画の設定に問題がありすぎて、さすがの上北さんでも修正しきれなかった、というのが率直な感想です。
 繰り返しになりますが、この単行本の表紙になった、「再会した二人が二度目の変身をする際、手を繋ごうとするものの一度指が当たると手をひっこめ、その後改めてしっかり手を握り合う」という描写は一生忘れられない名場面です。
 また、漫画版と映画を比べると、上北さんならではの表現で、映画の残念な部分を上手く緩和している場面が随所に見られます。
 一例を挙げると、この話の発端である、咲の寝坊について「明日の大会の事を考えすぎて寝付けなかった」とフォローを入れた場面です。

 ただ、そのようなフォローを入れても、やはりこの映画の冒頭であり、話のきっかけとなっている、「咲が舞との大切な約束に寝坊し、しかもそれをきちんと謝らない。一方の舞も、咲がまだ来ていないのに、待ち合わせの場所を離れて時計屋に行ってしまう」というのは、二人の日頃の言動からすると、絶対にありえない事です。
 そこが出発点になっているだけに、仲直りするまでの本編の大半は、ずっと違和感が残ってしまうのです。
 これがまだTVアニメだったら、上北さんならではの、「基本設定を維持しつつも、おかしい部分を修正した上で、独自の逸話を加えて素晴らしい話にする」ができたでしょう。
 じっさい、なかよし掲載の漫画ではそのような話がよくあります。ちなみに当ブログでは、それを「上北さんが、手本を見せた」と評しています。
 しかしながら、映画版の描きおろしで、映画の筋立てを大幅に変えた話をやるのは商業誌的に無理でしょう。
 とはいえ、先述したような形で、様々な所で、映画の残念だった部分を緩和・修正している描写がありました。そのあたりはさすがは上北さん、と改めて思いました。
 なお、描きおろしで2ページ漫画がありましたが、これは打ち上げでカラオケに行って、二人が大会での衣装を交換する、というだけの話でした。
 まあ、映画をベースにすれば、このような話にしかならないのは仕方ないでしょう。
 個人的には、どうせ8年半も経っているのだから、映画など意識せず、みのり・満・薫を出演させた、いつもの「上北版S☆S」を見たかったものだ、と思いました。