愛乃めぐみが、イノセントフォームを得ようとして失敗した話でした。
全体の流れとしては、一応、「親切は見返り目的でするものではない」という教訓になってもいるかと思いました。
ただ、そこにおける、愛乃めぐみ並びに、それを見ているプリキュアたちの描写はいかがなものかと思った話でした。
冒頭、前回イノセントフォームに目覚めた氷川いおなを羨む、愛乃めぐみの描写から始まります。
自分も得るためにはどうすればいいか、と考えた愛乃めぐみの結論は「もっと他人に親切にする」でした。
そして、街にでて、困っている人を探し始めます。この時点で、根本的におかしいのですが、もちろん本人は気づきません。
その結果、河原でロケット発射をしている、同じ中学の深大寺まみを見つけます。そして、失敗して落ち込む深大寺まみに対し、「ただいま皆の応援キャンペーン中です」といって、何か手伝わせて、と言いました。
深大寺まみは呆れていましたが、手伝っている祖父が「いいじゃないか」と言ったため、手伝ってもらう事になりました。
いきなり見ず知らずの人に「皆の応援キャンペーン中」だと言って近づいてくる人がいたら、99%以上の確率で詐欺師の類と考えるべきでしょう。そのような台詞を平然と言う事の異様さに驚くと同時に、この祖父は、振り込め詐欺なんかにあっさり引っかかりそうだな、などと思いました。
というわけで、愛乃めぐみの「親切の押し売り」が始まります。といっても、ロケットの事など何一つわからないので、頼まれた事は何もできません。
すると今度は、頼まれもしないのに、まだ使っている工具を片付けてしまいます。さらに、白衣の汚れに気づいて選択するのですが、実はその汚れは、「成功するまで洗わない」という深大寺まみの願掛けでした。
そういう事もあり、深大寺まみは口にこそ出しませんが、「何もしないのが一番の『人助け』」という空気になりました。
さすがに自分が役に立っていない事に気づいた愛乃めぐみは、帰宅後、ベランダ越しに相楽誠司にその話をします。しかし、彼は特に苦言は呈さず、励ましていました。
翌日の大使館も同様でした。プリキュア三人は、誰も愛乃めぐみの行動の問題点について言及しません。そして、愛乃めぐみの焼いたロケット型のクッキーを試食して喜んだりしていました。
そしていざロケット試射、というところでオレスキーが現れ、深大寺まみをサイアーク化して戦闘となります。
愛乃めぐみは怒りのパワーでチョイアークは圧倒します。しかし、サイアークの攻撃には苦戦しました。
そのとき、氷川いおなを筆頭に三人が現れます。そして、氷川いおながイノセントフォームになり、動きを封じたあと、ハピネスビッグバンで勝利しました。
その後、改めてロケット発射が行われて成功しました。そして四人は帰途につきます。そこで、愛乃めぐみは、「わたしも、まみさんに負けないくらい頑張りたい。誰かのためでなく、自分のためにもね」と言って話は終わりました。
とにもかくにも、愛乃めぐみが痛々しすぎた話でした。
彼女の長所であった「他人の幸せを願う心」を、自分がイノセントフォームになりたい、という私利私欲のために使うわけです。
31話で「アンラブリー」が言った邪推を本当に実行してしまった、と言った感じでした。まさか、あの時の精神攻撃が愛乃めぐみに影響を及ぼした、という事なのだろうか、などとまで思ってしまったほどでした。
しかも、やっている事が何一つ「人助け」になっていません。むしろ、深大寺まみが愛乃めぐみに気遣って「人助け」をした、という筋立てでした。
一応、好意的に解釈すれば、非科学的な「願掛け」をやめたり、散らかしっぱなしの工具を整理整頓した事で、深大寺まみが固定観念を捨て去り、柔軟な発想になってロケット発射に成功したから愛乃めぐみは役立った、となるのかもしれません。ただこれは、自分で書いていても、かなり無理があります。
そしてもう一つ印象に残ったのは、他の三人の愛乃めぐみに対する態度でした。
明らかにおかしい「自分がイノセントフォームを得たいがために『人助け』をする」という発想並びに、それを実行して深大寺まみに迷惑をかけたことを、誰一人批判しません。
また、結果としてイノセントフォーム獲得に失敗したわけです。しかしながら、その理由を諭す人もいませんでした。
最後に愛乃めぐみが言った「頑張りたい。誰かのためでなく自分のためにもね」という台詞も、色々な意味でひどい勘違いだと思うのですが、三人はただそれを聞いているだけでした。
以前、愛乃めぐみが「幻影帝国も含めて全員幸せになってほしい」と言った時は、氷川いおなは正面から批判しました。そして、その後、大森ゆうこは、「自分も氷川いおなに同意だが、自分の口から愛乃めぐみには言えなかった」という旨の発言をしていました。
要は、愛乃めぐみに厳しい現実などは話す事ができない(話す必要がない?)というわけです。今回は、氷川いおな、そして白雪ひめも、それに感化されていた、という感じでした。
子供の遊びで、ルールをまだで理解きない小さい子を「お味噌」と言って、ルールの枠外にして一緒に遊ばせる、という習慣があります。
研究所での深大寺まみは思い切りそのように愛乃めぐみを扱っていました。それと同様に、プリキュア三人も、愛乃めぐみの事をこの「お味噌」として扱っているような印象を受けました。
シリーズ開始当初の愛乃めぐみは、世間知らずの箱入り娘かつ最弱プリキュアだった白雪ひめを生活と戦闘の双方で助けながら成長を促し、病弱な母を支えていました。
そして、敵であるホッシーワに対しても本気で気遣うほど、他人の幸せを純粋に願う人柄でした。
ところが白雪ひめが人間的にもプリキュアとしても成長した事により、愛乃めぐみが助ける、という場面はなくなりました。また、家族の描写も途中からはほとんどなくなりました。
さらに戦闘においても、白雪ひめの成長に加え、明らかに強さが上の大森ゆうこと氷川いおなの参入で、存在感が下がっていました。今回の戦闘においても、愛乃めぐみは雑魚担当で、真打ちは氷川いおな、という描かれ方でした。
そしてついに、最大の良さであった「他人の幸せを願う心」まで、私利私欲の手段にするように描かれてしまったわけです。
しかもそれを、プリキュア三人は助言も忠告もしません。
率直に言って、見れば見るほど、愛乃めぐみが可哀想に思えてきた話でした。作り手は、彼女をどのようなキャラとして確立させたいのでしょうか。
次回は、白雪ひめがイノセントフォームになる話です。予告では氷川いおなとのツーショットが何度か描かれていました。彼女に触発されてイノセントフォームに開眼するような話になるのでしょうか。