Smile第9話

 やよいが、エイプリルフールでついた嘘を、みゆきが真に受けてしまい、大騒動になる、という筋立てです。
 話が大きくなってしまい、やよいは、その引っ込み思案な性格もあり、本当の事を言うタイミングを逸してしまいます。
 しかし、アカオーニとの闘いを通じて、ついに本当の事が言えます。その収拾を通じて、皆の仲が深まっていく、という話でした。

 冒頭、なぜか仮面ライダーみたいなスーパーヒーローが出てきます。実は、やよいが使っている目覚まし時計、というオチでした。それに合わせて、やよいの部屋が描かれます。布団は、イメージカラーの黄色でした。そして、ベッドの後ろには、いくつかの絵が貼ってあります。一番大きい絵は、やよいの自作絵と思われます。それがキュアピースだったかどうかまでは分かりませんでした。
 まだまだ眠たい、やよいですが、母親である、ちはるの「今朝はホットケーキよ」の声に飛び起きます。どうやら、大好物のようです。
 しかし、降りてみると、食卓にはパンと目玉焼きとプチトマトしかありませんでした。やよいは、ホットケーキの事を尋ねますが、ちはるは「今日はエイプリルフールだから」と言います。そして、納得した、やよいに対して、「でも、後で嘘って正直に言わないとね」念のため注意していました。
 一杯食わされた、やよいですが、食事をとりながら、ちはるに「わたし、ボーイフレンドができちゃった」と話しかけます。そして、ちはるが驚くと、「おあいこ、おあいこ」と言って笑い、心の中で「今日は楽しい嘘をついちゃおっと」と言っていました。

 一方、バッドエンド王国では、例の三角机にアカオーニが座って絵を描いています。そして、「絵描きにでもなるつもりかいかい?」と尋ねたマジョリーナに対し、「今日はエイプリルフールオニ、赤鬼に倒される桃太郎という嘘の話を子供たちに見せてやるオニ」と答えました。
 するとそこにウルフルンが現れます。そして、「世の中がバッドエンドになったら、桃太郎は赤鬼に倒される。したがって、それは嘘でなくなる」と突っ込みました。
 それを聞いた、アカオーニは頭がこんがらがります。それを見た、マジョリーナはウルフルンに「だめだわさ、アカオーニに難しいことを言っては」と言い、ウルフルンはアカオーニをバカにしたような感じで苦笑していました。

 そして登校のシーンになります。みゆきが、上履きにはきかえようとしている所に、やよいが来ます。そして、みゆきに挨拶されると、ふとエイプリルフールを思いつき、「わたし転校する事になったのの」と言います。すると、みゆきは真に受けて驚きます。
 やよいは、深刻そうな表情を崩しませんが、「心の中のやよい」は、みゆきが引っ掛かった事を喜んでいます。今回は、この「やよいの表情と心の中」を並べて描く場面がよく出てくるのですが、その描写が上手いと思いました。
 そして、引っ掛かった事に喜びながら、「もう少し」と心の中で言い、みゆきが「いつ?」と尋ねると「明日」と言ってしまいます。
 それを聞いてさらに驚く、みゆきに喜びつつも、そろそろと思い「はい、嘘でした。今日はエイプリルフールだから・・・」と言いかけます。しかし、その時、みゆきは慌てて走っていった後でした。
 やよいは驚いて、上履きもはかずに廊下に出ますが、みゆきの姿はもはや見えません。
 そして、みゆきは、あかねに転校の話をしてしまいます。あかねは驚きつつも、自分が転校した時の事を思い出し、みゆきに、「うちらだけの秘密やで」と言います。そして、理由として、自分が転校した時に経験した話をしました。
 そこに、やよいが追いついて、嘘だと話そうとしますが、あかねおよび、みゆきにに気遣いの言葉を熱弁されてしまい、話し出せません。さらに、HRの時間になってしまったため、そのまま教室に入らざるをえなくなりました。
 そして、HR終了後、みゆき・あかねは、なお・れいかに転校の話をしました。
 次の休み時間に、やよいが嘘である事を告白しようとすると、なお・れいかが来ました。なおは、もっと早く言ってくれなかったのが不満のような感じで、転校の話を切り出しました。すると、みゆき・あかねが先ほどの転校生心理の話をします。そこで話を振られた、やよいはついつい同意してしまいます。心の中の、やよいもパニック状態になってしまい、言えば言うほど、嘘が拡大していく、という感じになってしまいました。
 そして、授業終了後に悩んでいる、やよいにまたもや四人がたたみかけます。そして、プリキュアの話となり、れいかは「たとえ離れ離れになっても、私たちの気持ちはひとつです」と言って、やよいを抱きしめます。それに続いて、あかね・みゆき・なおも同じようにしました。感動的な場面なだけに、やよいは益々本当の事が言えなくなってしました。
 その後、昼休みになりますが、いつもの中庭に、やよいは来ません。もはや、直接謝れないと思ったため、漫画を見せて伝えようと、屋上で漫画を描いていました。
 それが完成したのですが、描き終わった時に、風で飛んでいってしまいました。ちなみに、漫画の内容ですが、キュアピースが「転校はウソ、ごめんなさい」と、みゆき・あかね・なお・れいかに謝る、というものでした。
 ここで、自分でなく、キュアピースに謝らせる、というのも印象に残りました。
 一方、中庭では、れいかが三人に提案をしていました。そして、やよいが教室に戻ると、黒板には「さようなら、やよいちゃん」と描かれ、お別れ会の会場になってしまっていました。
 その頃、上空では、風で飛んだ漫画を、アカオーニが拾っていました。

 教室で、れいかは、お別れ会の司会を初めてしまいます。そして、皆が口々に惜別の言葉を言い、寄せ書きまで渡されてしまいました。
 その寄せ書きですが、他のクラスメートの言葉を見ると、普通の別れの言葉の他に、「漫画を描いてくれてありがとう」と言うのと、「泣かせてごめん」と言うのがありました。一部の仲がいい友だちには、漫画系の趣味を明かしていたようです。また、あの性格ゆえに、いじめっこに泣かされた事もあったという事も分かりました。
 みゆき達は、右上のあたりにまとめて描いていました。皆、自分のイメージカラーのペンを使っています。ただ、れいかだけは、名前は青ペンでしたが、本文の「素晴らしい日々でした。」は黒の筆書き風でした。そのように書くことおよび、発起したにも関わらず、中心に書かない所に、れいかの人柄を感じました。
 この時、やよいは、もしここで本当の事を言うとどうなるか、と考えていました。そして、れいか・なお・あかね・みゆきに叱られた後、クラスの皆に怒られる、という情景を想像し、怖くなって泣きながら教室から逃げ出してしまいました。
 そして、校庭の隅で泣いている、やよいに四人に追いついたところに、アカオーニがバッドエンドを発動しました。

 五人は変身すると、アカオーニは校庭に転がっていた整備用ローラー(俗称・コンダラ)をアカンベー化しました。そして、アカオーニの指示とアカンベーが異なる動きをするという、エイプリルフールを活用した作戦で、プリキュアを翻弄します。
 それに対し、やよい以外の面々は「もう、嘘ばっかり!」「嘘つきは泥棒の始まりと言うんやで」「私は嘘が大嫌い」「嘘などつかず、正々堂々と闘いなさい」などと口々に、その作戦を批判します。それを聞く度に、やよいは辛い表情になりました。
 すると、アカオーニは、「嘘は素晴らしいオニ、騙されるほうが悪いオニ、な、キュアピース」と、やよいに話しかけ、さきほど拾った漫画を見せました。
 不可解な気配を感じた四人は、やよいに説明を求めますが、答えられません。そして、言い出せない、やよいに対して、みゆきは、「わたし、何があったってピースの事を信じているよ」と言い、転校した時の挨拶で、あかねにからかわれた際に、気遣ってくれた事を改めて感謝しました。
 それを聞いた、やよいはついに、転校が嘘だったと皆に告白します。それを聞いた四人は驚きますが、むしろ素直に話してくれた事を喜びます。そして、あかねは話を最後まで聞かずに伝えた、みゆきにも責任があると言います。それに対し、みゆきは、あかねの広め方にも問題があると返し、二人でプチ漫才が始まります。そうやって、やよいの気分を和らげていました。
 そして、改めて、やよいの転校が嘘だと確認すると、れいかは「それが一番嬉しいです」と言い、皆も同意します。
 それを聞いた、やよいは、嬉しさのあまり、泣き出しました。戦闘中にこんな形で泣いたプリキュアは、史上初かもしれません。
 ここでアカオーニとアカンベーが欠伸をして会話に水をさし、戦闘再開となります。アカオーニとしては、やよい嘘の件で内紛勃発する事を狙い、あえて攻撃を止めていたという事なのでしょう。
 そして、再び「エイプリルフール攻撃」をしますが、「わたし分かった、みんなを悲しませる嘘なんて、絶対についちゃ駄目なんだって」と言い、決意を固めたやよいは騙されず、フェイントを読んでアカンベーの顔面に蹴りを入れ、さらにはピースサンダーで止めを刺しました。

 そして教室に戻った、やよいは皆に嘘だった事を告げます。皆は騒然となりますが、れいかを筆頭に、みゆき・あかね・なおがとりなすと、「確かにいきなり明日転校なんておかしいと思った」などと納得しました。
 その後、何人かの級友が、やよいが去らない事に対する喜びを伝えます。それに隠れて、あかねは、みゆき・なお・れいかに何やら耳打ちします。
 そして、やよいの前に出てきて、「やよいの事、ちょっと嫌いになったな」と怒った表情で言います。続いて、なおも「うん、わたしも好きじゃなくなった」と言いました。さらに、れいかは笑顔ながら「ええ、私も嫌いです」と言い、最後に、みゆきが「作り怒顔」で「え、えーと、わたしも嫌い」と言いました。
 それを聞いた、やよいは再び青くなります。しかし、直後に、四人は「うそでーす」と言い、あかねは続けて「これでおあいこな」と言い、これで水に流す、という事になりました。
 そして、皆が笑いながら、外では桜の花びらが舞う、という描写で話は終わりました。

 やよいという、独特の個性を持つキャラを、非常に上手く描いた話でした。冒頭の、「目覚ましはスーパーヒーロー」「ベッドの後ろには自作も含めた絵」「まだ寝ようとするが、ホットケーキの一言で飛び起きる」というところからして、彼女の人柄を細かく描いています。
 また、ちはるとのやりとりでは、気心の許せる相手ということもあり、気軽に嘘をついています。そして、そのノリで、比較的気軽に話せる、みゆきにも嘘をついたところ、あかね、さらには、なお・れいかと広がり、それに伴い、段々と「実は嘘だった」と言いづらくなる、というのも彼女らしさが出ていて、面白いと思いました。
 また、その時の心境を、「心の中の、やよい」を使っています。その描き方が秀逸でした。特に、困って心の中で走り回りだしたところなどは、本当に上手いと思いました。
 そして、直接言えなかったため、漫画で伝えようとするわけです。その際に、謝るのが「黄瀬やよい」でなく「キュアピース」というのが面白いと思いました。自分では謝りづらいから、もう一人の自分に代わりに謝ってもらう、という心境なのでしょう。
いていました。
 そして、闘いを通じて、やよいが「エイプリルフールだから何でも嘘ついていいものではない」と理解した所では、彼女の成長を上手く描いていると思いました。また、その覚悟を決めた時の目付きの変化が、また印象に残りました。
 一方、騙される役割となった、四人のほうの描き方も楽しめました。みゆきは素直に信じ、あかねが話を広め、れいかがお別れ会などのイベントを立ち上げ、なおは「転校することを隠した」事に不満を言い、あまり動きません。このあたり、四人の位置づけがよく伝わりました。
 なおとしては、転校を秘密にしていた事が心に引っ掛かった、といくのもあったのでしょうか。一方で、アカオーニの嘘を知った時、一番厳しく糾弾し、やよいを不安がらせた、というのも彼女らしさが描かれていると思いました。
 れいかに於いては、みゆき・あかねの「転校生心理」に納得しつつ、それはそれとして、お別れ会を計画する、というのに、らしさを感じました。また、「別れの言葉」をあえて黒の文字でしっかりと書く、というところにもその生真面目な性格が伝わってきいました。
 みゆきは、いわゆる慌てん坊キャラとして噂を広める位置づけになっています。しかし、戦闘中に第1話の「最初に優しい声をかけてくれたのが、やよいだった」事を改めて感謝する事により、素直に信じてしまった理由を描く、という事で、うまくまとめていました。
 そして、火に油を注いだ形になった、あかねについても、自分の転校した時の心境と重ねる事によって、うまく理由付けしていました。また、最後に意趣返しをし、それでこの件をチャラにした、というのも上手いと思いました。
 また、変身中と変身後に、二度に渡って演じた、あかねとみゆきの「漫才」もそれぞれ上手く描けていて、楽しめました。
 さらに、バッドエンド王国のほうも、短いやりとりの中で、三人の位置関係を面白く描 自分はもともと、エイプリルフールという物が好きでなく、参加もしません。しかし、こういう使い方ができるなら、エイプリルフールにも利点はあるな、と思えたほど、最初から最後まで楽しめた話しでした。

 次回は、あかねの父親のぎっくり腰がきっかけで、あかねがお好み焼き屋の臨時店長となる話です。今回同様、あかねを軸に、それを取り巻く四人および、日野家の面々が描かれるのでしょう。これまた大変楽しみです。

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